【書評】『イシューからはじめよ』― なぜ、仕事が終わらないのか?

書評

「毎日遅くまで頑張っているのに、なぜか成果が出ない…」 「労働時間は長いのに、評価に結びつかない…」

多くのビジネスパーソンや研究者が、このような終わりの見えない徒労感に悩まされています。その根本的な原因は、能力や努力の量ではなく、仕事への「取り組み方」そのものにあるのかもしれません。

今回ご紹介する一冊、安宅和人氏の『イシューからはじめよ――知的生産のシンプルな本質』は、その問題に鋭く切り込み、生産性を劇的に向上させるための思考のOSを提示してくれます。


■ あなたも「犬の道」を走っていませんか?

本書が警鐘を鳴らす、生産性を下げる最大の原因。それが「犬の道」です。

これは、一心不乱に大量の仕事をこなすことで、いつか価値のある成果にたどり着こうとするアプローチのこと。しかし、本書によれば、この「努力と根性があれば報われる」という考え方こそが、私たちを疲弊させる元凶なのです。

では、価値ある仕事、すなわち「バリューのある仕事」とは何でしょうか。著者はそれを2つの軸で説明します。

  1. イシュー度:その問題に答えを出す必要性の高さ
  2. 解の質:その問題に対して、どれだけ明確に答えを出せているか

多くの人は、アウトプットのクオリティ、つまり「解の質」ばかりを気にしがちです。しかし、どれだけ質の高い答えを出したとしても、そもそも「イシュー度」が低い問題に取り組んでいては、その価値はゼロに等しいと著者は断言します。

世の中に「問題かもしれない」と言われていることの9割以上は、実は今この局面で白黒をつける必要のない問題なのです。それらに時間を費やす「犬の道」をひた走っていては、いつまで経っても価値ある成果にはたどり着けません。


■ 「悩む」のをやめ、「考える」を始めよう

本書を貫くもう一つの重要な概念が、「悩む」と「考える」の明確な違いです。

  • 悩む:「答えが出ない」という前提のもとに、同じ場所をぐるぐると思考がループしている状態。
  • 考える:「答えが出る」という前提のもとに、建設的に思考を進めている状態。

「どうしよう…」「うまくいかない…」と頭を抱えている時間は、実は「悩んでいる」だけであり、知的生産活動とは言えません。仕事や研究において「悩む」のは無駄以外の何物でもないのです。

では、どうすれば「悩む」から脱却し、「考える」ことができるのか。その鍵こそが、本書のタイトルにもなっている「イシュー(本当に答えを出すべき問題)」の特定です。

何に答えを出すべきかが明確になることで、初めて思考は建設的な一歩を踏み出すことができるのです。


■ 知的生産の「設計図」を手に入れる

『イシューからはじめよ』の凄みは、単なる精神論に留まらない点にあります。イシューを特定した後に、どのように質の高いアウトプットを生み出すか、そのための極めて具体的な「技術」が示されています。

  • 仮説ドリブン:いきなり調べ始めるのではなく、まず「仮の答え」を立てる。
  • ストーリーライン:仮説を検証するための論理的な物語を組み立てる。
  • 絵コンテ:ストーリーラインに沿って、必要な分析やデータのイメージを具体的に描く。

これらのステップを踏むことで、闇雲な作業は消え、やるべきことが明確になります。それはまるで、完成形が描かれた設計図をもとに、迷いなく建築を進めるようなものです。

マッキンゼーのコンサルタント、そして脳神経科学者という著者のユニークな経歴が、この手法の圧倒的な説得力と信頼性を裏付けています。


■ こんな人におすすめの一冊です

  • 努力が成果に結びつかず、空回りしていると感じる方
  • 部下や後輩に「考え方」そのものを教えたいリーダーの方
  • 研究や論文のテーマ設定、進め方に悩む学生や研究者の方
  • すべての知的生産の質を劇的に高めたい方

■ まとめ:仕事のOSをアップデートしよう

『イシューからはじめよ』は、小手先の時短術やライフハックを教える本ではありません。仕事や研究への取り組み方、その根幹にある思考のOS自体をアップデートしてくれる一冊です。

もしあなたが、日々の業務に追われ、本来の目的を見失いかけているのなら、本書はまさに羅針盤となるでしょう。「犬の道」から抜け出し、本当に価値ある仕事に時間を使うために。ぜひ、手に取ってみてください。あなたの仕事人生が変わる、その最初の一歩になるはずです。

▼書籍の詳細はこちらから

この記事を書いた人
専門社会調査士
ねっきー調査系おじさん

自称・ひとリサーチャー。
大学・民間団体において15年以上調査事業を担当し、はぐれ専門社会調査士として活動中。調査領域は主に防災・観光分野。興味があることは色々と調べるクセがあるおじさんです。

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