【書評】なぜ、仕事が成果に繋がらないのか?思考の「OS」を入れ替える、たった一つの方法

書評

「またか…」

上司から投げかけられる、冷ややかな視線と短い言葉。自分なりに考え、資料を準備し、必死に説明したはずなのに、いつも決まって返ってくるのは「で、結局何が言いたいの?」「根拠は?」「もっとちゃんと考えてきて」。

寝る間も惜しんで頑張っている。誰よりも会社のことを考えているつもりだ。それなのに、なぜか仕事は空回り。成果は出ず、評価もされない。同期は次々と大きなプロジェクトを任されているというのに。

この差は、一体どこから来るのだろうか。才能か、センスか、それとも単なる運なのか。

もし、あなたがそんな風に感じているのなら、本書はまさにその突破口になるかもしれない。その行き詰まりの原因は、根性や情熱の欠如などではない。ましてや、地頭の良し悪しでもない。

成果を出し続ける人と、そうでない人を分かつもの。それは、極めてシンプルかつ強力な、仕事の「型」を知っているかどうかに過ぎない

その「型」が、深沢真太郎氏の『「数学的」な仕事術大全』に示されている。

「うわ、数学か…」

そう思った瞬間に、ページを閉じようとしたかもしれない。学生時代、サイン・コサイン・タンジェントに苦しめられた記憶が蘇り、無意識に拒絶反応を示してしまう気持ちは痛いほどわかる。しかし、どうかもう少しだけ、この話に付き合ってほしい。

断言するが、この本はあなたに数学の学び直しを強要するものではまったくない。難しい数式や証明問題など、一つとして出てこない。

本書が解き明かすのは、数学という学問そのものではなく、その根底に流れる「数学的な考え方」を、いかにして日々のビジネスシーンで使える「武器」へと変換するか、その具体的な方法論なのだ。

それはまるで、これまで使っていた古くて動きの悪いパソコンのOSを、最新のサクサク動くOSに入れ替えるような体験。思考の解像度が劇的に上がり、これまで霞んで見えていた問題の本質が、驚くほどクリアに見えるようになる。そんな感覚を、この一冊はもたらしてくれる。


「数学」と「数学的」は全くの別物である

本書の最も根源的で、そして衝撃的なメッセージは、「数字とは言葉である」という定義から始まる。

私たちは日常的に、「売上が結構いい感じ」「この製品が今キテる」といった曖昧な言葉を使ってしまう。だが、それでは相手に何も伝わらない。「具体的に数字で言うとどうなの?」と突っ込まれて終わるのが関の山だ。

著者の深沢真太郎氏は、数字を単なる計算の道具ではなく、コミュニケーションを円滑にするための「言語」として捉え直すことから、すべては始まると説く。

「山田さん、1分だけ時間もらっていいですか?」

この一言には、「ちょっと」という曖昧な言葉を使った場合とは比較にならないほどの、相手への配慮とコミュニケーションの具体性が宿っている。これこそが、「数学的に」話すことの第一歩なのだ。

そしてもう一つ、「数学言葉」という概念が登場する。これは、いわゆる「なぜなら」「したがって」「一方で」といった、論理的な接続詞のことだ。数学の証明問題が、これらの「数学言葉」によって無駄なく、美しく、最短距離で結論へと導かれるように、私たちのビジネスコミュニケーションも、この「数学言葉」を意識するだけで、劇的に分かりやすく、説得力を持つものに変わる。

つまり、本書が提唱する「数学的」とは、学問の話ではない。「数字」という万国共通の言葉と、「数学言葉」という論理のレールを使って、いかに他者と正確で円滑なコミュニケーションを取るかという、極めて実践的なスキルの話なのだ。この事実に気づくだけでも、世界の見え方は大きく変わるはずだ。

仕事の「解像度」を爆上げする、5つの魔法の”動作”

では、具体的にどうすれば「数学的な仕事術」を実践できるのか。その核となるのが、著者が提唱する5つの「基本動作」だ。

  1. 定義する
  2. 分解する
  3. 比較する
  4. 構造化する
  5. モデル化する

これら5つの「する(動詞)」こそが、あらゆる仕事の質を根底から変える魔法の杖となる。

例えば、会議が始まる前に「このミーティングは意思決定が目的です」と定義するだけで、参加者の意識は統一され、無駄な議論は劇的に減る。

売上が伸び悩んでいるという漠然とした問題を、「メンズ製品」と「レディース製品」に分解し、それぞれの数値を比較するだけで、「実はメンズコスメ市場に大きな可能性がある」という、次の一手が見えてくる。

本書では、これらの動作がいかに強力かを、ラーメンの構造分析から企業の採用戦略、はたまたソフトバンクの決算資料に至るまで、身近で具体的な事例をふんだんに用いて解き明かしていく。

中でも特に、多くのビジネスパーソンが思考停止に陥る場面で絶大な威力を発揮するのが「構造化」だ。著者はこれを「分けるとつなぐ」という、これ以上ないほどシンプルな言葉で説明する。

「データ分析」と聞くと、多くの人がExcelの膨大な数値を前に途方に暮れる。「とりあえずデータを触る症候群」に陥り、意味のない計算とグラフ化を繰り返した挙句、結局「よく分かりませんでした」で終わってしまう。心当たりのある人も多いのではないだろうか。

著者は断言する。データ分析は、データを触る前に勝負が決まっている、と。

料理をする際、何を作るか(目的)を決めずに、いきなり野菜を刻み始める人はいない。データ分析も同じだ。「若手が育たない」という問題を解決したいのなら、いきなりデータをいじるのではなく、まず「若手が育たない」という問題が、「そもそも何でできているのか(構造化)」を「分ける」ことから始める。そして、その要素を「なぜなら」「したがって」といった「数学言葉」で「つなぐ」ことで、問題のメカニズムを明らかにし、初めて「もしかしたら、ここに原因があるのではないか」という仮説が生まれる。データ分析とは、その仮説が正しいかどうかを検証するための、最後の仕上げに過ぎないのだ。

この「構造化」という思考の型を身につけるだけで、これまで五里霧中だった問題解決のプロセスに、確かな一本の道筋が見えるようになるだろう。


その「正しさ」に、根拠はあるか?説得力を生み出す二つの源泉

「君の言いたいことは分かる。でも、納得はできない」

ビジネスシーンで、これほど悔しい言葉はない。理解はされても、相手を動かすことができない。その壁を突破するために必要なのが「説得力」だ。そして説得力とは、すなわち「根拠」の有無に他ならない。

本書では、この「根拠」を生み出す方法も、極めて数学的に解説される。根拠の源泉は二つ。「比較」「モデル化」だ。

「リスキリングは大切だ」とただ叫ぶのではなく、「かつての常識が通用しなくなった『今』」と「過去」を比較することで、その主張には切実な根拠が生まれる。

さらに、その比較が「相手の仕事に関係ある数字」で行われたとき、説得力は爆発的に増す。経営者に現場の細かい数字を語っても響かない。彼らにとってのエモい数字、つまり「グッとくる」「ハッとする」「ピンとくる」数字は、いつだって「お金」にまつわるものなのだ。

そしてもう一つの武器が「モデル化」。すなわち「型」を作ることだ。

円の面積を求めるとき、私たちは何の疑いもなく S=πr2 という公式を使う。なぜなら、それが「正しい」と証明されたモデルだからだ。この考え方をビジネスに応用する。

「損失は利得よりも2倍大きく感じる」という、行動経済学のプロスペクト理論という「モデル」に当てはめて、「だからこそ、損失を回避するためのこの提案には価値があるのです」と語る。それだけで、あなたの主張は単なる思いつきではなく、学術的な裏付けを持つ「正しい」ものとして相手に認識される。

面白い物語 =「何を書くか」×「どう書くか」

本書で紹介されるこの公式のように、複雑な事象をシンプルな「モデル」として提示する力。それこそが、一瞬で相手を納得させる最強のコミュニケーション術なのだ。

書く・話す・見せる。すべての土台は「数学」にあった

本書の射程は、単なる「考える」技術にとどまらない。「読む」「書く」「話す」「見せる」といった、すべてのコミュニケーション行為を「数学的」という視点で再構築していく。

「数学の教科書とは、世界で最も読みやすい文章である」

この逆説的な一文に、著者の哲学が凝縮されている。無駄な言葉が一切なく、論理的に破綻なく、最短距離で結論に至る。その美しさこそが、ビジネスコミュニケーションが目指すべき理想の姿だというのだ。

・相手の時間を奪わないよう、小出しと太字だけで要約が伝わるように書く
・話の冒頭で「今日の話は3つの要素で構成されています」と場の定義をしてから話す
・グラフは情報を詰め込むものではなく、一つのメッセージを伝えるために化粧を施して見せる

そこには、小手先のテクニックではない、相手への「優しさ」と「配慮」という一貫した思想が流れている。秋山仁、小池百合子、本田圭佑といった超一流の話し手が、いかに無意識のうちに「数学的な」話し方を実践しているかの分析は、まさに圧巻の一言だ。


あなたの仕事に「革命」を起こす一冊

本書は、単なるビジネススキル本ではない。それは、仕事という複雑で混沌とした世界を生き抜くための「思考のOS」であり、未来を切り拓くための「武器」の数々が収められた武器庫である。

ファクトがない状況で「知らんがな」と言いたくなるような問いに、どうやって答えを出すのか(アサンプションベース思考)。意思決定できない上司を動かす、オリジナルの「評価式」の作り方。AI時代に人間が文章を書くことの意味。ページをめくるたびに、凝り固まった思考が解きほぐされ、新しい視界が開けていく感覚に、きっと感動するだろう。

この本は、こんな人には向いていないかもしれない。

・楽をして成果を出したい人
・小手先のテクニックだけを求める人
・本書を読んで満足し、行動に移さない人

しかし、もしあなたが、

・本気で今の自分を、そして仕事の成果を変えたいと願っている
・漠然とした不安や手詰まり感から抜け出したい
・具体的な思考の「型」と「武器」を手に入れたい

そう強く望むなら、本書はあなたのキャリアにおける、最も価値ある投資の一つになるだろう。

成果が出ないのは、あなたの能力が低いからではない。ただ、戦い方を知らなかっただけだ。

さあ、この一冊を手に取り、思考のOSを入れ替えよう。そして、「数学的」という最強の武器を装備して、明日からの仕事という戦場に、自信を持って臨もう。

↓ご購入はこちらから

Amazonで『「数学的」な仕事術大全: 結果を出し続ける人が必ずやっている 』をチェックする

この記事を書いた人
専門社会調査士
ねっきー調査系おじさん

自称・ひとリサーチャー。
大学・民間団体において15年以上調査事業を担当し、はぐれ専門社会調査士として活動中。調査領域は主に防災・観光分野。興味があることは色々と調べるクセがあるおじさんです。

ねっきー調査系おじさんをフォローする
書評
ねっきー調査系おじさんをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました